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リバーベル街道にて


世界は瘴気に包まれた。
ひとたび触れれば、人は生命を失うことになるだろう。

…産まれるずっとずっと前の本に書かれてある言葉だ。

私を産んでくれたお母さんも、お母さんのお母さんも知っている。
続きにはこう書かれてあることも、みんな知っている。

唯一、瘴気を遠ざける術…
それはクリスタルの存在。その光は人々の生活を優しく包み込む。

私の産まれた世界では、クリスタルがないと生きてゆけない。
瘴気、という空気のようで空気でないものに触れると死んでしまうから。
見た目にはまったくわからない。瘴気で包まれた世界とクリスタルで守られた世界の違いなんて。

でも、確実に瘴気は世界を覆っていた。
クリスタルのないところに、生命は…「ない」…厳密には「ある」のだけど…それを、みんな知っている。




クリスタルも万能じゃないことも、みんな知っている。
それはクリスタルの限界。年に一度清めの儀式を行わなければ…クリスタルは永久に失われる。

失われたらどうなるか? みんな知っている。
瘴気は牙を剥いて襲い掛かってくるはずだ…すべてを破壊しつくし、生命を奪い去り、無に返す。

だから…みんな知っているから、私たちは行く。
クリスタルを守るため、生命を守るため、みんなを守るため、家族を守るため。

旅に出よ。
 ミルラの雫
生命の水を求めて…


私の名前はミライ。メーヴ村のクリスタルキャラバンのリーダー。
幼馴染のクラトゥ、照れ屋のクムゥの3人でミルラの雫を求めて旅をしている。

メーヴは小さな村。大陸のはずれにある。
先輩達が引退して、私たちが旅をすることになって3年目。
危ないこともたくさんあったけど、なんとか3年目を迎えることができた。

今年から子供っぽいコーネが加わって4人になったキャラバン。
話によるとリバーベル街道のミルラの木が雫を蓄えたらしい。村から近いし行ってみようと思う。








「何いいコちゃんぶって書いてるの〜?」

クラトゥが茶化す。日記を書いている私に向かって人懐っこい笑顔を投げかける。
クラヴァットとセルキー。種族は違えども仲良しの彼女だ。

「だって、いつ、いかなる時でも、自分達の足跡を残さなきゃね。」

優等生っぽく答えると、きょとんとしたクラトゥの顔が眼に映る。

「そうだ。それが我々の生きた証であり…」「後世の人々に語るべき歴史になる…でしょ?はぃはぃ」

そして、いつものようにクムゥのユークらしいお説教みたいな言葉を遮り、クラトゥが拗ねる。
もうすぐりバーベル街道。ジャイアントクラブの住む滝の奥にミルラの木がある。

…気を引き締めて…行こう。




「うわぁ…これはいい川ですね。釣りなんてするとよさそうだ!」「おぃおぃ、コーネ…」

まったく緊張感のないコーネの言葉に笑いながらリバーベル街道に入る。
以前と違ってモンスターも強くなっているはずだ。

ゴブリンやズーの猛攻を、私とクラティが食い止め、クムゥが魔法で援護する。
コーネも初めてながらもパルチザンを振り回して果敢に敵陣を突破していった。

もうすぐ滝が近づいてくる…先行しがちなコーネを呼びとめ、

「絶対にジャイアントクラブに近づいてはダメ、あなたはまだモンスターとの戦いになれていないんだからね。」

言い聞かせて滝への道を目指す。




滝の中から現れたジャイアントクラブを見据える私たち。
と、突然コーネが先陣を切って…「うぉぉぉぉぉっ!」パルチザンを振りかざし向かっていく

「っあの…バカ!」クラトゥも合わせて飛び出す
戦い慣れしていないコーネなりに、勇気を振り絞って先陣を切ったのだろうが…完璧にマズい

あれじゃジャイアントクラブに叩いてくれといわんばかりだ。
走りこむコーネを追いかけて私とクムゥが飛び出した時、パルチザンの一撃目がジャイアントクラブに命中した

ジャイアントクラブがよろめいて一歩下がる…それに合わせてニ撃目、三撃目と連続で叩き込むコーネ
深追いしたコーネの目の前でジャイアントクラブがハサミを振り上げる
危ないっ…でも素早く避けてくれた…安堵したのもつかの間、ジャイアントクラブが泡を吐き出した

「コーネっ!避けるのっ!」

思わず叫んだが…コーネは泡に包まれて思うように身動きが取れない
そこに振り下ろされる大きなハサミッ!

「危ないッ」

クムゥがコーネを庇って大きなハサミの直撃を受ける、吹き飛ばされるクムゥ

「クムゥゥゥゥゥッ!」コーネの絶叫の中、迫り来るジャイアントクラブ
大きな泡を吐きながら、巨体を揺らしながら、一瞬ニヤリと笑ったような気がした…

そう、逃した獲物を捕らえたような、そんな笑いだった

コーネが旅に慣れてないことなんてわかりきっていたのに…
でも、いまさら何を言っても始まらない。今はただ…目の前の敵を倒すだけだ

突然、ジャイアントクラブの姿が消える…「上ッ!」クラトゥの声で見上げると太陽を隠す大きな影
その影は見る間に大きくなりコーネの上に落ちて…ウソッ!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

プレス攻撃を受けて叫ぶコーネ。目を覆いたくなるような、とはこのことだ…
ほとんど動くことのできないコーネ。リルティ特有の厚い鎧のおかげで息はあるが、もうすぐ…

「アンタが泣きそうになってどうするのッ!リーダーッ!」

突然平手が飛んできて私の頬を往復する。クラトゥの顔が目の前に広がる。
そうだ、まだ戦いは終わってない…まだ、ヤツが生きている…

「っ…そうです…っ…私に合わせてください、ミライっ、クラトゥ!」

クムゥ?!瀕死の彼の手から赤い光が広がっていく…そうだッ!

「ミライ、せーの、でいくよっ!」「ぅんっ!」

それぞれ赤い光を集中させて迫り来るジャイアントクラブを見据える



「せーのっ…ファイガっ!!」



ひときわ大きな炎がジャイアントクラブを包み…今ならッ!

「えぇーーーーーぃっ!」

ルーンブレイドを思いっきり振り下ろしてソウルショットを放つ
それに合わせてクラトゥがバラフライヘッドを手に突進する

二人の攻撃が決まった瞬間に、ひときわ大きな光を放って…ジャイアントクラブは四散した…

「ハァッ…ハァッ…ハァッ……」

疲れた身体を引きずってコーネの元に向かう…まだ、息は…ある…!
ケアルの詠唱終えるとコーネは立ち上がり、泣きそうな顔で私にしがみついた。

「ゴメンよ、ゴメンよ、ミライ…言いつけを守らなかったばっかりに…こんな、こんな…」

「男の子は泣かないんだよ…ね…」

それだけ言って私の記憶は途切れた。



気が付いた私はミルラの木の側で眠っていたらしい。傍らにはクラトゥの膝が見える。

「気が付いた?リーダー」「…今はミライでいいよ…」

無事にミルラの雫は手に入ったようだ。モーグリの郵便屋さんが来るまでしばし休憩。
向こうでコーネがクムゥの前に正座してる…どうやらお説教を食らっているみたい。

「ミライ…キャラバンの最初の日、覚えてる?」

そう…最初の日、クラトゥは私やクムゥが止めるよりも早くハードスマッシュを持ってジャイアントクラブに向かっていったっけ?
あの時、クラトゥも同じように泡に捕まって、私とクムゥが助けたんだった。

その後クムゥがお説教してたのも同じ。


なんか急に笑いがこみ上げてきた。
みんな無事に、コーネにとっては初めての雫を手に入れることができたんだ。
よかったという安堵の気持ちと同時に、生命をかけた旅が始まったんだと感じた。









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