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トライアングル





サイバーデスドラゴンとの死闘も終わり……
デスブレンを倒すため、GFコマンダーたちは自分たちとガチャボーグたちの絆を深めるために特訓を重ねる。


「いっけぇーっ!」

──チェイサーッ!

「やったわねー!…よーし、ケイ!出番よ!」


そんな河川敷での特訓を見つめる少女……
風になびく緑のロングヘアーと青いバンダナが夕日に照らされて赤く染まる。
どこか悲しい少女…潤んだ瞳で見つめるのは、特訓中の少年…


「……コウ……」


金髪の少年の名前をつぶやき、小さなため息をつくと立ち去った。



「うさぎー!強くなったな。えっと、そのメカメカしてるガールボーグ…」

「おぉぃ!サイバーガールだよ!ねー。」

肩に座ったケイにウインクしながらコウの間違いを笑う。
腕組みをしたまま見上げるGレッドも苦笑している。


「ひどいよねー。サイバーガールのこと、メカメカだってさ」

「ダイジョウブデス、マスター。デモ、姉ノスーパーやハイパーハ、怒るカモ?」

──んー?っと首をひねりながら答えるサイバーガール。

「ごめんごめん。いや、ほら、メカメカしてるからさ」

照れ笑いを浮かべながら謝るコウ。
夕日に照らされてまぶしく光る金髪にうさぎはドギマギする。

「も、もぅ!!覚えてあげてね」

心のドキドキを悟られまいと顔を背けるうさぎ。


つい先日の雨の日…ちょっとした出来事があって以来、コウとうさぎは一緒に特訓をするようになった。

もっと強くなるのはもちろんだが、別の感情もある

──恥ずかしいけど、一緒に居たい。でも恥ずかしい……でも……

複雑な気持ちだけど、結局今日も手をつないで家路につく。
手をつなぐことで安心する…二人とも口には出さないが、心の中では感じていた。


「ところでうさぎ、なんか誰かに見られてたみたいだけど、誰なんだろうな?一緒に特訓したいなら言えばいいのに」

最近、河川敷や公園で特訓していると決まって感じる視線…
コウにはそれが不思議でならなかった。一緒に特訓したいなら言えばいいのに…

「……さ、さぁ?ネコベーじゃないの?」

ちょっとあせって答えるうさぎ。

うーん…ネコベーかぁ…などとコウは空を見上げて考えている。
同じようにうさぎも考える……特訓を…いや、コウを見つめる熱い視線の正体が本当にあの子なのかどうかを…そして…

──本当にそうだったら…うーん、強敵っぽいよなぁ……でも…どうしよう…
そんな風に考えるうさぎは、何かを決めたように小さく「うん」と頷くと不思議そうなコウに微笑んだ。




夕日に照らされた河川敷を仲良く手をつないだ影が立ち去ると、また現れる少女。肩には黒い鎧の騎士が立っている。

「オロチ様…恐れながら申し上げるが……声をかけられてはいかがかと…」

「う、うるさいっ!い、いいだろ!」

「…恐れながら…見つめるだけでは何も進みませぬぞ?」


肩に乗ったダークナイトに真っ赤な顔で反論する少女。
サイバーデスドラゴンと戦ったとき、必死になって助けてくれたコウ…
デスブレンの手先としてコウたちと戦ってきた手前、おいそれと仲間に入れてくれとは言えない。
でも、コウのあの必死に助けてくれたときの言葉…思い出して胸が熱くなってドキドキしてきた。

──これからも守ってやる……か…

「…………オロチ様、顔が赤くなって、少々笑みがこぼれております…」

「…う…うるさいっ!」


またも真っ赤になって反論するオロチ。
視線の正体……記憶こそ戻っていないが、デスブレンの呪縛から解き放たれたオロチであった。




次の日、いつものように河川敷に向かおうとするコウに待っていて欲しいと伝えてうさぎは教室を出て行った。

「なんだろうな。なにか知ってる?マナ」

「……うさぎちゃん、ファイトッ!……えっ!?えっ、えっ?あ、あ、う、うん。なんだろうね?」

ニコニコと取り繕うように笑うマナと不思議そうに腕組みするコウ。
学校を飛び出たうさぎが向かったのは…河川敷。今日の特訓を行なう予定だった場所だ。



一方河川敷でも途方にくれたようにたたずむ影。

「おかしいな…今日も河川敷で特訓しているはずなのに…」

オロチは誰も居ない河川敷を見つめていた。情報によると、今日もコウは河川敷で特訓のはずだ。
──どこからの情報かはオロチだけの秘密だが──

「オロチ様……コウ殿と一緒に特訓を行なう予定のうさぎ殿が近づいてまいります…」

「あぁ、わかった。少し隠れる。」


河川敷の看板の陰に隠れるとうさぎの様子を見守るオロチ。
もう少しすればコウが来るはず…今日こそは…わ、わたしも一緒に……

顔を赤らめながら看板の陰に隠れるオロチだが、後ろに近づいてくる影には気づいていない……


「うっさぎぃ〜!見つけたぜぇっ!」


突然背中で響く声!驚いて振り向くとワイヤーガールが浮かんでいる。
ニヤッと笑って背中のワイヤーを使ってうさぎの元に戻る…そしてその先には…

「みつけたわよ〜!」

うさぎがこちらを目指して走ってくるのが見える。

「?!な、なんで?」

「発見されたか…」

驚いて固まってしまっているオロチと、対照的に冷静なダークナイト。
そうこうしているうちに、とうとううさぎが目の前にやってきてしまった。

「やっとみつけた…ハァ……ハァ……」

「クッ…な、なんのようだ?」

あくまでもここに居たことは偶然だと言わんばかりに体裁を保とうとするオロチだが、
動揺しているのがありありとわかる。


ふぅ、と一息ついて、腰に手を当てビシッ!とオロチを指差して大きな声を出すうさぎ

「やっと見つけた!特訓中にコウをじっと見つめてるの知ってるんだから!」

「な、なんでわたしが?!」

顔を真っ赤にして反論しようとするオロチの目の前で振られるうさぎの指。
そして、スカートのポケットから出てきた写真は…


「くらえっ!」

人気ゲームのまねをしながら目の前に突き出す


「わ、わたしと、その向こうに居るのは…?!」

それは、河川敷でコウの特訓を見つめるオロチを後ろから写した写真だった。
どうやって撮影したのかは知らないが、決定的な証拠となりえる…そして、その写真を見つめてへなへなと崩れるオロチ。

「そ、そんな写真…どうやって撮ったんだ…」

「ほぅほぅ……さすがはユージ…よっく撮れてる」

感心したように写真を自分でも見つめるうさぎ。
視線に気がついたころに、ユージに頼んで写真を撮ってくれるように頼んでいたのだった。


「……コウから聞いたけど、記憶がないんだって?」

写真をポケットにしまうと、上から覗き込むように問いかけるうさぎ。
蛇に睨まれた蛙の心境はこんな感じだろうか?恥ずかしさとくやしさでうつむいてしまう。

「そ、それがどうした!そ、そんなコト、わたしはっ!」

うつむいたまま小さく答えるオロチ。
肩がふるふると震えている…泣きそうになっているのか…ギュッと握られた手は紫のスカートを力いっぱい掴んでいる。

──ポンッと肩に手が置かれる…

潤んだ目で見上げるオロチに笑いかけるうさぎ。

「オロチ、寂しかったでしょ…今も記憶をなくして、震えてる……」

「なっ!?そ、そんな……そんな……そんな…」

「あたしたち、オロチのこと…イヤなんて思わないよ。一緒にデスブレンと戦ってくれるならうれしいし…それに…」

うさぎも伏目がちになりながら言葉を続ける。

「ライバルができるのはイヤだけど、オロチが元気になるなら…あたし大歓迎だよ」

そう呟いたうさぎ。
記憶をなくしたオロチの話。そのオロチを助けた話。オロチがコウにどんな感情を持っているかなんて簡単にわかった。
だから、本当なら自分からライバルを増やすようなマネはしたくないけど…

記憶をなくしたオロチが早く記憶を取り戻せるように…早く明るく笑えるように…。


「だからっ!もうっ!いつもいつも、そうやって遠くから見つめるんじゃなくてっ!」

大きな声に驚いて見上げるオロチと目が合うと、ペロッと舌を出して恥ずかしがるうさぎ。
そのまま「えへへ」と笑ううさぎにつられて笑うオロチ。

「もっと、正々堂々としたらどう?もっと友達になろっ!」

「……ぅん…………」


決まりね!といった感じでオロチの手を取って立ち上がらせるうさぎ。
両手で手を包まれ、恥ずかしがるオロチを見て、まじめな顔になるうさぎ。

「でも、あたしもコウが好きだから…負けないよ!」

「わ、わたしだって!」

そこまで言って、どちらともなくもう一度笑い始める。
うさぎと手をつないで笑うオロチの瞳に、少し暖かさが戻ってきた。




「おぉ〜ぃ!」

「ハーイ!うさぎちゃ〜ん!」

校庭に面した窓から手を振るマナ。後ろからコウがゆっくりと覗き込むと…

「……いぃ!?オロチ?!」

「ふんっ…本当なら降りて来いと言うのだが…まぁ、いいだろう。行ってやるぞ」

窓を見上げてオロチが言う。
心底驚いて窓の下を見つめるコウをよそに、そばで笑うマナ。
うさぎとオロチは手をつないで入り口に消える。

──素直になればいいのに…──う、うるさい。は、恥ずかしいんだぞ!
コソコソと話をしながら階段を上がって教室に向かう二人。

戻ってきたうさぎの提案は、4人でトレーニングするというものだった。
マナとコウのチームと、オロチとうさぎのチーム。

「あっはっは!美少女3人に囲まれて特訓できるなんて、うれしいでしょ〜」

「……ぜんぜん」

「キーッ!」


……教室のバトルが始まる少し前、オロチに耳打ちするうさぎ

──どっちがコウを倒せるか勝負よ?
──望むところだ、負けないぞ!

「なにコソコソ話してるんだ?」

腕組みするコウ。頭にはハテナマークが浮かんでいるようだ。
「ムゥ…」Gレッドにもわかりかねるようだが…

「いいから、いいから。行きましょ!」

マナに背中を押されてバトル位置に立つ。


このトレーニングバトルで、別のバトルが起きているなんて知るよしもないコウ……

「来い!」

「まっかせなさーい」


土曜日の午後、がらんとした教室でガチャボーグ同士の熱い戦いが始まった。




……

…………

……………………


「まけたぁ〜!!」

「手加減してよぉ〜」

うなだれるコウとむくれるマナ。勝負はオロチとうさぎコンビの勝ちだ。
足元には傷ついたGレッドがナオに治療を受けている。


「負けるわけがない!」

「ナイスコンビネ〜ションっ!」

勝ち誇るオロチと喜ぶうさぎ。
しかし、二人とも心中は穏やかではない。──どちらがGレッドを倒したのか!?
回復したGレッドに近寄るケイとダークナイト。

「Gレッド…ちょっと……」

手招きをするケイに気がつき、不思議に思いながら近づくGレッド。
ニコニコしながらその様子を見守るナオ。

「ムゥ……ケイたちには負けたよ。わたしももっと強くならねば」

「で、Gレッド……そのことなんだけど…さっき、どちらの攻撃で倒れた?」

Gレッドを見上げて微笑むケイ。
後ろには静かにダークナイトが立っている。
なぜか、Gレッドの答えを待ち受けるように二人ともこちらをじっと見つめている。

「……な、なにかあるのか?この答え次第で…」

さすがに感づいたのかGレッドも答えるのをためらっている。
キラキラした目で見つめるケイと、無言で凝視するダークナイト……

──これは、どう答えても…ム、ムゥ……

腕組みして考え込んでしまうGレッドだが、ため息をついて一言

「両方同時だった……ダークナイトの剣が速かった気もするが、ケイのサブマシンガンも当たっていた気もする…」

……シンッと静まって……ハァ…とため息をつくケイとダークナイト。
がっくりと肩を落とすとケイはうさぎに、ダークナイトはオロチにそれぞれ耳打ちする…


「うそぉ〜」

「くっそぉ!」


それぞれ先ほどとは打って変わって口々に不平を言う。
混乱するGレッドだが、もっとわからないのがコウだ。

「な、なんだよ、Gレッドにトドメさしたのがどっちだっていいだろ?」

「ま、まぁまぁ、コウくん。…うさぎちゃん、オロチちゃん。ほら、今日のところは二人とも勝ちってことでいいじゃない」

マナの言葉に二人とも小さく「ぅん」と頷く。
コウの右側にうさぎ、左側にオロチ。腕を取ってそれぞれ手をつなぐ。


「コウ!一緒に帰ろっ!」

「コウ!一緒に帰るぞ!」


両側から言われてびっくりするコウ。
ニコッと笑って舌を出すうさぎと、フンッと恥ずかしそうに上を向くオロチ。
そして、笑いながら「バイバイ〜」と手を振るマナ。

「お、おぃ!おぃおぃ、そ、そんなにひっぱるなって!うさぎもオロチも、ちょ、っちょっと!」

両腕を引っ張り合いながら学校を出る三人。
うさぎがコウと腕組みをすると、オロチも負けじと腕を組む。
なんのコトかさっぱりわからないコウは二人に引っ張られていく。


「今日のところは…しょうがないわね」「引き分け…だな」

「ムゥ……何のことだか…」

ダークナイトとケイは顔を見合わせ、それぞれの主人を追いかける。
一人残されたGレッドは、腕組みしたまま考え込んでしまっている。

ちょっと積極的になったオロチと、恋のライバルと友達がいっぺんにできたうさぎ。
そして、両手に花の状況だが、いまいち理解していないコウ。

その様子をニコニコと見つめながら微笑むマナだった。








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