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契り




「雨上がりの空…虹が綺麗だ…」「ガッハッハ!綺麗な紫陽花とうまい酒…最高じゃけんのぅ」


朱の盃を酌み交わしながら雨上がりの庭で紫陽花を眺めるマシンレッドとサイバーアトラス。


プランターのたくさんあるこの庭では、ちょうど紫陽花が見ごろとなっている。
いつもは塀の向こうから覗くだけだったが、共通の知り合いであるサイバーニンジャの計らいでこの庭に招待されていた。

「ガッハッハッ!無礼講じゃけん。まぁ、座りんしゃぃ座りんしゃぃ」

そう言って無理やりサスケに盃を持たせるサイバーアトラスを見ながら笑うマシンレッド。
当のサスケは、当主の知り合いということで緊張しているようだ。

恐縮しまくりで盃を受けるサスケの傍らにはナオがニコニコと座っている。
二人のなれそめと、それぞれのGFコマンダーたちのことを根掘り葉掘り聞きながら酒を勧めるサイバーアトラス。
その様子を眺めながら、マシンレッドの隣にサイバーニンジャが座る。


「サイバーアトラス殿もお変わりないようですな。ところで御仁の後輩、Gレッド殿も…良き噂を聞き申したが…」

「うむ、相思相愛のボーグがいると聞いている。喜ばしいことだ」

サイバーニンジャがマシンレッドに酒を注ぎながら語りかける。


司令官であるビクトリーキングから地球への先発隊として送られたGレッド。
素晴らしいGFコマンダーと巡り会えてデスブレンを倒すまでに強くなった彼も、恋に関しては素人。
先輩として、なにより一人の友として心配になったマシンレッドも、おせっかいだとわかりながらもいろいろと手伝っていた。

その甲斐もあって、最近はうまくいっているようだった。



「なーにを辛気臭く話しとるんじゃぁ?ワシにも聞かせてみんけん。ガッハッハッ」

ドカッ とサイバーアトラスが二人の間に座り、素焼きの徳利を傾け直接飲みながら豪快に笑う。
その様子に苦笑しながらマシンレッドが今までのいきさつを語る。

ふむふむと聞いていたサイバーアトラスも、聞き終わって膝を打ち答える。

「そりゃぁ祝杯を挙げんとのぅ!めでたいのぅめでたいのぅ…それで、その相手というのは、誰じゃ?」

「それは拙者も伺いたく…」

マシンレッドは二人に向き直り、爽やかに笑うと徳利を傾けた。




ところ変わって、ガチャボックススの中…
サイバーアトラスが外に出ているので、ガールボーグとエンジェルボーグたちが羽を伸ばしている。

そんな中にあって…なぜかケイの元気がない。なにかに思い悩んでいるようだった。

「たーいっちょ〜!」

──ガバッ!そんなケイの後ろからアイスワルキューレが抱き着いてくる。
びっくりして「きゃっ」と小さな声を上げるが、肩の後ろから覗き込むアイスワルキューレに微笑みかける。

「ん、ちょっとね…」

「タイチョー、暗いデスヨ?」

サイバーガールがスッと近寄り二人の前にしゃがみこむ。
どした?どした?という風にみんながケイの周りに集まってくる…周りを見渡し、ハァとため息をつくと「じゃ、一緒に考えてもらおうかな?」…と話し始めた。




それは少し前。うさぎと一緒に道を歩くケイを呼び止める声がする。

「ケイ様…」

懐かしい声に立ち止まる。そこには、インペリアルナイトが立っていた。
女性ながら白銀の鎧に身を包んだその姿…主君であるオロチ──記憶が戻った今はリンだが──に、ダークナイトとともに仕えている。

「おぉ!インペリアルナイトじゃないの。へー、ケイの友達?」

「えぇ、昔からの幼馴染です。」「ケイ様のご主人様ですわね。はじめまして。インペリアルナイトと申します。」

ダークナイトとともに苦しめられたのも昔の話。
今ではリンともすっかり仲良しになって──コウをめぐるライバルとして──楽しい学校生活を送っている。

「んじゃ、あたしは先に行ってるから。ケイ、久しぶりのお友達なんだし、ゆっくり話してていいよ」

と、言ってうさぎは先に行ってしまった。
ハーイと手を振って、インペリアルナイトに向き直るケイ。


「さて、インペリアルナイトっぽくないわね。そんな風に困っている姿なんて…どうかしたの?」

「実は、その…少々…困ったことになりまして…」


それは数日前……なぜか眠れずガチャボックスから抜け出したインペリアルナイトが月を見上げていたときのことだった。
ヘルムを脱ぎ、ほほに夜風を感じるインペリアルナイトだったが、後ろに気配を感じてソードの柄に手をかける…

が、その手をやさしく止めるボーグ…気配の主はダークナイトだった。

「ダ、ダークナイト様。驚きましたわ。突然こんなところにこられるのですから…」

「ふむ…それはすまないことをした」

見下ろすダークナイトにサッとヘルムを小脇に深々と頭を下げるインペリアルナイト。
その肩に手を置き「よい」と一言言うと、ダークナイトもヘルムを取り、隣に座ろうとする。

「あ、あの…ダークナイト様?」

「わが主を助けるためとはいえ、友を倒すのは心引き裂かれる思いだな…」


デスブレンに操られ、主を苦境に立たせたデスウイング。──少なくともダークナイトは、彼が心の底からデスブレンに従っていたとは思っていない…
インペリアルナイトが助けに来てくれなければ、あのまま鎌の錆になっていたかもしれない。

ともに戦いながら最後に袂を分かってしまったが、いつか彼もリン様のGFエナジーによって復活するだろう。
そのときこそ、彼ともう一度語り合いたいものだ。……そう言ってダークナイトはインペリアルナイトを見つめる。

「そのときまで、私の支えになってはくれないだろうか?」

突然の申し出に、混乱するインペリアルナイト。

「もったいなきお言葉ですわ…リン様に仕えるのと同じように、ダークナイト様も大切な主でございます」

苦笑しながらも、インペリアルナイトをまっすぐ見つめるダークナイト。そのまま手を伸ばし髪を撫でながら一言…



「主従ではなく、パートナーとして…というのでは……だめだろうか?」



──ケイもあまりのことに「えーっ!」と声を上げてしまった。


「ケイ様…わ、わたくし…ダークナイト様からの申し出…お受けしようと思うのですが……その…」

「あ、もしかして儀式のこと?」


インペリアルナイトの家は代々伝わる騎士の家系…お嬢様のインペリアルナイトも婚礼の儀式のために、4つの証を手にしなければならない。


まず、純潔や清らかさの象徴…清らかさの色“ブルー”を使った身に付けられる指輪か腕輪を用意する。

次に、新しい未来へ踏み出す気持ちの象徴…未来の色”ホワイト”を使った靴を新調する。

そして、先祖から伝わる安定の象徴・・・安定の色”グリーン”を使った宝石を親から譲り受ける。

最後に、幸せな生活の象徴…幸せの色”ピンク”を使った小物を幸せな友人から借りる。


4つの証を無事に手に入れると、初めて結婚を許されるのだという。


「わたくし…白いブーツだけは手に入れることができましたの…でも、そのほかの証を手に入れるのが難しくて…」

「よし、それならわたしも一緒に探してあげるから!絶対に幸せになろうねっ!」


また後で会う約束をすると、うさぎの元に戻るケイ…けれども残った証はどれも難題ばかり…

──こうして、ガチャボックスの中で悩んでいたということだった。


話し終わって視線をアイスワルキューレに戻すと、うっとりと物思いにふけっている。
目の前のサイバーガールもニコニコとしている。

「いいなぁ…」

ケイの話から、いろいろな想像が頭の中を駆け巡っているらしい。
考えながら突然何かを思いついたのか、ケイから離れて立ち上がるアイスワルキューレ。

「これはどうかしら?」

スルスルと腕から取り出したのは、キレイなブルーの腕輪。
清らかさのブルーにぴったりなその腕輪をケイに手渡すと、にっこりと微笑むアイスワルキューレ。

「あら、キレイなブルーの腕輪…って、コレ……いいの?」

「いいですよー、そういう話大好きですし。ぜひぜひ幸せになって欲しいなぁ…って」


こうして、アイスワルキューレに透き通ったブルーの腕輪を貰ったケイ。
残りは2つ…難題ぞろいだけどがんばるぞ、と自分を奮い立たせて出発するのだった。




外に出ると宴会はまだ続いていた。
すっかりオヤジ化しているサイバーアトラスがケイを見つけると手招きをする。

苦笑いしながら近寄るケイにサイバーアトラスは座布団を差し出す。
手を振りながら「ちょっと用事があって外に出なきゃならないんですよ」と話しかける。

「なんじゃ、つまらんのぅ…ところで何しに行くんじゃ?お父さんに教えてみんしゃい!」

「お、おと…お父さん?」

アハハハと乾いた笑いを浮かべながら周りを見渡すが、助け舟はどこからも出そうにない。
ハァと小さくため息をついて、ぽそぽそと語り始める。

「あの…その、ね。4つの証をね、探しに行こうと思ってるんですよ」


と、その言葉を聴いたサイバーアトラスの動きがピタッと止まる…
何か思案しているように空を仰いで、杯をコトンと置く。




────次の瞬間!!




「ムォォォォ!ケイ、わしゃぁ感動しとるぞ!」

ガッシとケイの肩をつかみ、大声を上げるサイバーアトラス。

「え、え、え?」

「おんしがGレッドとどんなに幸せになりたいのか…よぉーっぅわかったけんの!
 ここではワシが親代わりじゃ!お父さんじゃ!遠慮なく何でも言うがいいぞ!ガッハッハ」

ガクガクと肩を揺さぶられびっくりしているケイをよそに、サイバーアトラスは豪快にまくし立てる。

「い、い、い、い、い、い、え、え、え、え、え、え、ち、ち、ち、が、が、う、う、う、ん、ん、で、で、す」


ピタッ!!


またもサイバーアトラスの動きが止まる。


「なんじゃ、違うのか…せっかくオテンバなおんしにも春が来たと喜んでおったのに…で、どう違うんじゃ?説明してみんしゃい」

「オテンバは余計ですっ!」

なんといっても、難関の緑色をした宝石…そんなものがすぐに手に入るとは思えない。
とりあえず、インペリアルナイトとダークナイトのことを説明するケイ。

ふむふむと聞いていたサイバーアトラスだが、やおら立ち上がると「マシンレッドーッ!」と叫ぶ。
…叫ばなくてもすぐ側に居たのだが…マシンレッドも立ち上がり「オォ!」と答える。


「こいつはぁ…あのお方の力を借りる以外に…」「うむ、手はない。」


と、一緒に外に連れ出されケイ。
え?え?え?とわけもわからず連れて行かれるケイの心配をよそに、工事現場までやってきたサイバーアトラスとマシンレッド。


「ジジ様ー!ジジ様ー!おらんのかーっ!」

「どちらにいらっしゃるのですかー!」

工事現場に響く二人の声。
その声に答えて、のっそりと動くボーグの影が見える…と、突然その影の頭がゴロンと転がり…

「あ、あたっ、頭が…落ち…た……?」

驚いて声を上げるケイの目の前に、巨大な鉄球が転がってニヤリと笑う…


「キャッ…………キャァーーーーーーーーーッ!!」


「あたま、あたま……」

と、手をばたつかせながらヨタヨタと歩くメガトンロボの胴体だが、座り込んでいるケイの目の前に落ちている頭を見つけるとそのまま持ち上げて乗せる。

──精神を集中するようにしばらく目を閉じ、カッ見開き叫ぶ!


「今、ジジ様いうたか?!じじい言うたかッ!?」

「ワシと話すときは、前と後ろにサーを付けろと言ったろうがッ!!」


ハッとして、敬礼する二人。同時に声を出す。

「サーッ、イエッサー!」


「ふざけるなッ!大声出せッ!」


「ッ?!……サーッ、イエス サー!」


そのまま答える二人に驚きながらも、鬼教官と呼ばれたメガトンロボが目の前に居る……
ガールボーグ部隊の戦闘訓練を受けていたとき、マシンボーグ部隊の鬼教官、メガトンロボのことはよく聞いていた。
そんな有名な教官が、こんな場所で何を……?


──あのサイバーアトラスまでも、直立不動で敬礼のポーズを崩さない。
二人の心に交錯する思いは、共通している…訓練時代のメガトン先生の言葉…



「貴様らがマシンボーグ部隊にふさわしいかどうか、ワシが見極める!」

居並ぶマシンボーグを目の前に、叫んだメガトンロボ。
まだ若いボーグたちには反抗的なものたちも多いが、臆せず頭を投げつけてはギロリと睨む。

「じっくりかわいがってやる!泣いたり笑ったり出来なくしてやる!」


訓練は過酷を極めた…夕日を背にメガトンロボを先頭にマシンボーグ部隊の掛け声が響く…


「ふざけるなっ、大声出せっ!いくぞ!」


──ビクトリー司令を知ってるかい?
────ビクトリー司令を知ってるかい?

──百戦錬磨のつわものさ!
────百戦錬磨のつわものさ!

──合体だ!──合体だ!
──空を飛べ!──空を飛べ!
──陸を行け!──陸を行け!
──トランスフォーム!──トランスフォーム!


「ぜんたーい…止まれッ!」


夕日を背に語り始めるメガトンロボ……
つらい訓練に耐え切った新人マシンボーグ部隊の顔を一人一人じっくり見ながら目を閉じる。

「知ってのとおり、ガチャボーグ星はデスブレンに攻撃されている…戦いは熾烈を極めておる…」

「マシンボーグ部隊は死ぬ…死ぬために我々は存在する……
 だがマシンボーグ部隊は永遠である…つまり――――貴様らも永遠である!」

むせび泣くマシンボーグたち。
満足そうに目を閉じ、空を見上げるメガトンロボ……


……そんな思い出話は、マシンレッドとサイバーアトラスにしかわからないが。


立ち上がることも忘れて、呆然と目の前の状況を見つめるケイの耳にマシンレッドの声が入ってきた。


「サー、ご質問があります!サー!」

キッとマシンレッドを睨むと、目を閉じ「──許可する……」とつぶやく。

「サー、ガチャボーグ星に伝わる4つの証に関してお聞き致します!サー!」

とりあえず立ち上がって3人のやりとりを見つめるケイ。
それにしても、教導隊の訓練はすごかったのだろうな…あのサイバーアトラスまでかしこまって…

ふと、メガトンロボに呼ばれる。

「ケイよ。お前の話は聞かせてもらった。……なかなか殊勝なボーグじゃな。」

「優秀なウィッチボーグなら宝石を作り出せるじゃろう…はてさて…どこかにいるか?」

園話を聞いて、なにか思い出したくないものを思い出したように引きつるケイ。


「ひ、一人…優秀……かどうかはさておき、知っていますが…た、頼むんですか…?」

ケイは引きつった笑いのまま三人に答えた。




場所は変わってナオの家の屋根裏…バグウィッチの研究所はここにあった。
腕のいいウィッチボーグとは、ナオの友達バグウィッチだった。

トラブルメーカーなバグウィッチにナオ抜きで会いにくるのは気が引けたのだが、それもインペリアルナイトのため。
思い切ってドアをノックする。

「あらー!ケイじゃないですの。」

ニコニコと紅茶を出しながら来客を迎えるバグウィッチ。
一息ついたところで、早速ケイは先ほどの話をする…翠の宝石が作れるかどうか…


「んー…そうですのねー。それじゃ、アチキのマストなボーグさまと一日デートを取り付けたらOKですの。」


──嫌な予感がする…この子がそうやって自分の願望をかなえようと言うときは、毎回なにかすごいトラブルに巻き込まれたような…


「そうですのー!Gレッド様ですのー!!アチキのマストなGレッドさまが、アチキとデートしてくれたら考えないでもないですの。」




……

………

…………


「ケ、ケイ!?…ケイが固まってしもうたぞ!マシンレッドぉ!」

「ム、ムゥ……しょうがないといえばしょうがないが…」


真っ白になって固まっているケイ。
大概のトラブルは経験済みだが、こんなトラブルは初めてだよ…


「どうしたんですの?ケイ。」

どうにか立ち直って大きく深呼吸をすると、バグウィッチに不思議そうに見つめられる。
いつものように能天気に八重歯を見せながら笑っている…こ、この子悪魔めぇ…


「あー、アコガレのGレッドさまとデートできるならお安い御用ですの。」

翠の宝石を手渡しながらニコニコと笑うバグウィッチ…も、もう後戻りはできないぞ…
げっそりと真っ青な顔でアハハと乾いた笑いを浮かべるケイ。



この後、肩を落としたサイバーアトラスとマシンレッドの姿が商店街で見られたそうだが、それはまた別の話。



やっとのことで翠の宝石を手に入れたケイ…インペリアルナイトに手渡しながらバグウィッチの話を聞いてもらう。
驚いてしょんぼりしてしまうインペリアルナイトをなだめつつ、考えあぐねるケイ。

「さ、さて……最後は幸せの色”ピンク”の小物かぁ…どうしようかな……」

と、インペリアルナイトは微笑みながらこちらを見つめている。

「ケイ様…実は、幸せのピンクの小物ですが……ケイ様からお借りしたいと思っております。」


──へっ?と、キョトンとした目でインペリアルナイトを見るケイ。
相変わらず微笑んだままのインペリアルナイトは、こう切り出した。

「だって、ケイ様はGレッド様と幸せな生活を送られているではありませんか」

にっこりと微笑むインペリアルナイト。
対照的に、真っ赤になって目を白黒させるケイ。

──スーッ……ハーッ…

大きく深呼吸して気を落ち着かせると、首の後ろに手を回す…カチッという音がしてペンダントが外れる。
ウサギのマークをかたどったペンダント…Gレッドから贈られた大切なペンダントだ。


「わたしが一番大事にしているペンダントよ?……これで、全部そろったかな?」

「ハイッ!」


大きくうなづいて微笑むインペリアルナイト。
その目はうるうると揺れていた。



──数ヶ月後……



「と、言うことだったの…もう大変だったのよ?でね、Gレッド。インペリアルナイト…幸せになれるといいよね。」


インペリアルナイトも無事にダークナイトのパートナーとなった。
そのときに受け取った小さなブーケを手に持って、Gレッドに語りかけるケイ。

インペリアル内とのために駆け回った出来事を話して…バグウィッチの一件をどうにかGレッドに納得してもらっていたのだった。


「ム、ムゥ……そのとおりだが…ケイ、なぜわたしの膝の上に座っているのだ?」

「えーっ、だってほら…明日は、例の……」

だいぶ時間が空いてしまったが、明日はバグウィッチの指定してきた日。
明日だけは、バグウィッチにGレッドを渡さなければいけないのがケイには悔しそうだ。

「それと、ひざの上に乗るのは、何の関係が…ム、ムゥ…少々恥ずかしい……」

──それが目的なんだけどな。

ひざに座ってGレッドを見上げて笑い掛けるケイ。
このポジションは、ケイだけのもの。

「それよりも、明日は……わたしのせいでもあるけど……バグウィッチに変なコトされないでね!」

ウインクしながらGレッドを見つめると、真っ赤になってうなづく。
目を閉じて身体を預けるケイ。
空を見上げると、青く輝く月が二人を包み込んでいた。









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