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真っ赤なGレッド




「Gレッド、これでいいのか?」

「あぁ!コウ、ありがとう」

「へへっ!いいよ…んじゃ、行こうぜ!」

Gレッドに白い細長い箱を手渡したコウ。受け取り何かをごそごそと詰め込むと、プラズマブレードの代わりに背中に取り付ける。
向かう先はちょっと遠いところにある大きな池のある公園。そこでうさぎと待ち合わせだった。

今日はホワイトデー。
バレンタインデーにうさぎからプレゼントを貰ったコウは、今日はそのお礼を兼ねてのデートらしい。
デートと言ってもただ単に一緒に遊ぶだけみたいだが…

Gレッドのほうもケイからプレゼントを貰ったらしく、お返しを考えていた。
そのために必要だったのが、先ほど受け取った白い紙箱…たぶんボールペンケースなのだろう…
そこに詰め込んだのは自分で加工したプレゼントだった。




電車に揺られて公園についたGレッドとコウ。うさぎとケイは先に噴水前のベンチに座っていた。

「おそーい!」

立ち上がって手を振りながら呼びかけるうさぎの声に、照れ笑いを浮かべながら謝るコウ。
そのままレンタルサイクルを借りにサイクルショップに向かう二人…

「あらっ、手なんかつないじゃって…すっかり仲良しさんね」

ベンチに一緒に座っていたケイがその光景をうらやましそうに眺める。
ガールボーグ部隊の隊長としてがんばってきたけど、やっぱりああいうのにも憧れるな…
そう思いながらベンチを飛び降り、Gレッドに近寄る。

「遅かったのね。来ないのかと思っちゃったわよ?」

「ム…すまなかった。準備に手間取ってな…」

──そんなのモロバレじゃない…ほんと、こういうことに関してはGレッドもまだまだよね。
──あれってバレンタインのお返しだよね、なにかなー?

背中にいつものプラズマブレードじゃなくて白い箱を背負っているのでモロバレなのだが、
わかっていないのはGレッドだけらしい。



「それじゃ、Gレッド…私たちも行きましょ」

「ム、ムゥ…ケイ、少し話があるのだが…その…な…」

──きたっ!

「んー?なに?Gレッド」

もちろんホワイトデーだと知ってるが、ここは知らないフリをするのが鉄則よね。
わざとらしく上目使いで見上げてみると、真っ赤になって顔をそらしてしまう。

さわやかな風が頬を撫でる…見上げると真っ青な空が広がっていた。
──ムゥ、とうなる声が聞こえる…覚悟を決めたらしい。

「ム…ここではちょっと恥ずかしいのだが…」
「…それじゃ、こっち行きましょ!」

恥ずかしそうなGレッドに微笑みかけつつ、腕を引っ張る。
「ケイ、そんなに引っ張らないでくれ」というGレッドの声を無視して植え込みを抜けると、水面が広がった。

「さ、Gレッド、ここなら誰もいないわよ?ね、…なーに、話って」

「ム、ムゥ…そ、そうだな」

レンガに腰掛けGレッドをじっと見つけるケイ。
水面に太陽の光が反射してキラキラ光り、ゆらゆらと揺れている。
多分バレンタインのお返しだってわかっているけど、わざとわからないふりをして期待の眼差しで見つめる。

「ム、ウム……あまりこういうことをしたことないので、勝手が分からないのだが…」

──あのGレッドが真っ赤になってる…わー、かわいいー

内心ニコニコ笑いながらもGレッドを見つめるケイ。
こうすることでGレッドがますます赤くなるのを知らないわけではないが…
恥ずかしがるGレッドを見るのも悪くない、なんて思いつつ見上げる。

対照的にGレッドは座るわけにも行かず、かといって歩き回るわけにも行かず、
空を見上げては「ムゥ…」足元を見ては「ウム…」などとうなるばかり。
相当恥ずかしがっているみたいだった。


さんざん時間がかかって背中から白い箱を取り出す。
これを…とGレッドが手渡そうと近寄り、立ち上がって受け取ろうとするケイ。



そのとき、一陣の風が吹き抜けた。



突然の風に煽られてよろけそうになるケイを支えるGレッド。

「大丈夫か?ケイ」

「ふふ、ありがとう…案外大胆ね」

ちょうど後ろから抱き寄せるような格好になっているのに気が付いて、あわてて離れるGレッド。
しかし、そのときもうひとつ気が付いた…Gレッドが手渡そうとしていた細長い箱が忽然と姿を消している…

どこだ?風の吹いたほうを見ると、白いものが水面に浮かんでいた。
しかもだんだん沈んでいくのが見える…──追わなければっ!──瞬時に判断したGレッドは池に飛び込む!

「トゥ!」

水しぶきがあがり、水中のGレッドの赤い身体が黒く染まる。
そして、そのまま赤い身体すらも見えなくなってしまう…

「…Gレッド…大丈夫かしら…」

珍しくオロオロとしてしまうケイ。
植え込みから飛び出して柵に飛び乗って水面に目を凝らす。


ケイにとっては息苦しい時間が過ぎていく…いくらGレッドと言っても水中でずっと活動できるわけじゃない。
このまま溺れちゃったらどうしよう…でも、Gレッドなら大丈夫…だよね?
自問自答を繰り返しながら、水面を見つめるケイ。





そのうち、ゴボゴボとなにか泡のようなものが浮かんでくると、赤い色が浮かび上がってくる。
──あぁ、よかった。Gレッド──と、思ったのもつかの間、その赤い色はどんどん大きくなる…そして…


「この池に落ちてきたGレッドはケイのものか?」


なぜか赤いジェルフィールドに包まれたジャックが悠然と現われた。


「ジャ、ジャック?ど、どうしたの…そ、それにGレッドが落ちてきたって…」

驚くケイの言葉を制してジャックはゆっくりと語り始める。
ユージと同じような、つかみ所のないしゃべり方で…

「私はこの池の守り神…守り神ジャック様だ…この池にGレッドを落として嘆いているケイを見て、やってきたのだ…」

────ジャ、ジャック?……あ、頭痛いわ…

どうやらジャックはこの池の神様になりきっているみたいだ。
白い布をかぶって、ご丁寧に頭の上に輪っかまで付いている。

「ケイ、この中にキミが落としたGレッドはいるか?」

ジャックが手招きをすると、タールダイバーが水の中から出てくる
タールダイバーはケイの目の前に立ち止まり、また水の中に潜っていってしまう。


ケイの目の前には3体のGレッドが立っている…が…


「わたしは金のGレッド」
「わたしは銀のGレッド」
「わたしは青いGレッド」


「よろしく!」


…3体とも同時に、こちらに片手を挙げて にこやかに笑いかける3体のGレッド…口元がきらりと光る…

「ケイが落としたのは、この金のGレッドか?それとも銀のGレッドか?…もしかして、宇宙心理学的に青いGレッドか?」


ケイは、内心くらくらしながらもジャックに答えた。

「あ、あの…赤いGレッドなんですけど…それに落としたわけじゃ…」

恥ずかしそうにケイが話しかけると、3体のGレッドは途端にがっくりと肩を落とす。

「わたしの金色よりも」
「わたしの銀色よりも」
「わたしの青色よりも」


「ケイは赤色が好きなんだ!」


これまた3体同時に頭を抱えて左右に振る…よほどショックだったらしい…
可哀想に思いながらも、いや、キミたちドコからきたの?と疑問に思うケイ。
ジャックのいたずらにも困ったものだけど、今はGレッドが心配だ…もう一度話すケイ

「あ、あの…えっと、金や銀、青やクリスタルとかそんなんじゃなくて、赤いGレッドを…返してもらえますか?」

ジャックのペースに合わせて、できるだけ悲しそうに焦りの感情を込めて言ってみた…
それに気をよくしたのかジャックは大げさに身振りをすると、ざわつくGレッドたちを制して、わざとらしく驚く。


「なんと!ウソをつかないとは!気象学的にステキだ、ケイ!」


両手をパチンと合わせると──ジェルフィールドの中なので音は聞こえなかったが──
タールダイバーがさっきのように現われ、消える…そして、目の前の3体のGレッドは姿を消し、いつものGレッドが現われる。

ずぶ濡れだが、手にはしっかりと細長い箱を握っていた。

「それでは、かわいらしくもいじらしいケイ…サラバだ〜!」

ジェルフィールドが消えると、ジャックはまた池の中に飛び込む。
急いで池の中を見てみるが、優雅に泳ぐジャックの姿がうっすら見えた…ような気がした

────ジャック…本当に不思議な子

柵の上から降りてGレッドの側に着地するケイ。

Gレッドの多少息が上がっているが、どうやら無事らしい。
沈んでいった白い箱を追いかけるうちに、たまたまジェルフィールドに包まれたようだった。


「よかった…もぅ、ダメよ。あんな危ないことしちゃ…ね」

「…ウ…ウム…以後、気をつけるようにする」


照れ隠しのように空を見上げて呟くGレッド。
そして、先ほど拾ってきたケイに向かって白い箱を差し出す。

「これはわたしからの気持ちだ…今のケイに対する純粋な気持ちを、受け取って欲しい」

受け取り箱を開けるケイ。

白い箱から取り出したものは、うさぎの形をした小さなペンダント…
──イナリ山で拾ったチェーンとコウの持っていたキレイな石を加工して作ったものだった。
Gレッドを見上げると、恥ずかしいのか横を向いている。

「ケイがうさぎとずっと仲良くできるといいと思ってコウにも手伝ってもらって作らさせてもらった、あまり気の利かないプレゼントで申し訳ない…」

「…ふふふっ…」

小さく笑うケイ。

なにがおかしいのだ?とでも言いたそうなGレッドをもう一度見上げると、ポニーテールを揺らしながらジャンプする。
そして、驚くGレッドの頬に近づくと軽くキスをして、にっこりと微笑みながら答える。

「ありがとう、ずーっと大事にするね」

そのまま目を閉じて寄りかかるケイ。
どうしていいかわからず硬直したままのGレッド。

──もうちょといじめてもいいかな?

いたずらっぽく微笑み、後ろ手にGレッドの手を取る。
震えているGレッドの手にペンダントを握らせると振り向いて呟いた。

「Gレッドがつけて…ね」

真っ赤になってあたふたしているGレッドの両腕を掴んでゆっくりと持ち上げる。
そのまま腕を持って左右に開かせると、目の前にウサギの形をしたペンダントが揺れる。

…首の後ろに両手がまわり、カチャカチャと金属音が聞こえる。
カチッと何かがくっついた音がした瞬間、そのまま抱きつくケイ。

「ッ!!?!」「ホントに恥ずかしがり屋さんね」

真っ赤になって、また硬直してしまったGレッドを可愛く思いつつ、見上げて微笑みかけるケイだった。







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